カテゴリ: イスラマバード

軽快でリズミカルな音楽に合わせ、トントンカンカン釘を打つ無駄のない作業。文字通り脇見もせず、互いに無駄口も叩かず、40℃を超す酷暑の中でも熱心に働く作業員がいるのだと感心。軽快な音楽につられ「何を造っているのか?」と、画面をジックリ見つめていたオバハン。何枚かの板が形になっていく。本棚ではない!衣装棚でもない!! ゲゲッ!棺桶ではないのと思わず顔を顰めてしまったわ。そんなモノをわざわざ見せて頂かなくとも良かったのに・・息子の説明によると各県、郡に対して政府からの「ご注文」による棺桶作りだと言う。なんか悪いモノを見てしまった後味の悪さなどと一瞬、感じたが、昨今の日本では棺桶も通販で買えるではないの。ピンキリの値段、組み立て式・・さすが日本!なんと簡便な社会か。  
バロチスターン州、シンド州、KP州の田舎、特に人家が稀で土漠が広がる地方では、医者にもかからず神の御許へ召される人がこれから激増するのだろう。 いよいよコロナ感染者が20万人に届く。政府発表の死者数は4000人弱だが、これから一気に増えるとの話だ。ニュースなどでも死者の埋葬が普段の3倍になっているとあった。      
オバハンの暮らす地区G-6の西半分(2㎞×4㎞くらい)が明日から軍と警察によって完全封鎖される。この地区には下級公務員官舎が立ち並び、3~4部屋くらいに平均20人くらいが暮らし、ここが首都の中でのホットスポットの1つだという。オバハンの家から西へ向かっては封鎖だが、東へは出て行ける。我が家の食料は常に1ヶ月分くらいの用意があるとは言え、買い溜めの出来ない人々には辛かろう。

きょうからモンスーンに入ったかのような蒸し暑さだ、日に3回のシャワーが必要な季節になった。水道の蛇口からは熱湯がほとばしる、水が熱湯に代わる前の1~2分で水をかぶるしかない暮らしになった。

    

パキスタンでは、とてつもなく酷い汚職政権が前、前々と2代も続いて、約2年前首相に就任したイムラーン・カーン(正義党)は経済の立て直し、汚職追放に力を入れている。経済政策の一つとして、首相は昨年1月頃だったか・・から、輸入関税を大幅に高くした。お陰で町のスーパーなどでは輸入物の食料品がほぼ消えた。   
だが、考えて見れば、30年前のイスラマバードでは輸入品などは手に入らなかったし、必要とも思えなかった。輸入品が豊富にあふれるようになったのは、911同時多発テロ事件後、アメリカでの暮らしでは迫害を受けそうだと(イスラーム教徒である)パキスタン人が、大挙、帰パして以来だ。そういう人たちを相手にちょっとオシャレで高級な店では輸入品を並べた。冷凍物のチップスや魚、野菜など、質の良い缶詰などを見つけて田舎者・かつ貧乏性なオバハンは驚いたものだ。「こんなに高い物を平気で買って行くパキスタン人たちがたくさんいるンだ!」と。アメリカとパキスタンの経済格差、アメリカ帰りはお金を持っていた。 
思い返せば30年前は、輸入物はおろか、日々食べるお米も気に入った物を車で6時間も走り、水田で短粒種米を作っているからと、スワット地方まで買いに行っていたものだ。魚にいたっては冬場、仕事でたまに行くカラチで、気絶しそうに汚い港へ行き、仲買人から魚を購入、嬉々として飛行機で運んで来た。1年に1~2回、それ以外に海の魚に出会うようなことがない暮らしだった。     
今年に入って約半年、日本から毎春のように運ぶ「お米、コシヒカリ」も底をつきつつある。ロックダウンの前に野外大バザールで「念のために」と買っておいたスワット米は、普通の店では見かけない。冷凍庫には肉、鶏などはたくさんあるが、お米を初めとする日本食、調味料などが無くなって来たのはチト淋しいな。お嫁チャンの、
お店が開けるくらいの量を貯めこんでいたという膨大な日本食(子供たちのおやつ類)も、「ここまで減ったのは初めてです!」というくらいらしい。
30年前の暮らしと変わったのは、エアコンのある部屋で朝までノウノウと寝られるようになった贅沢さだ。

ここ3日ほど暑い、昨日は体感温度47度の表示が出た。
夏至が過ぎ一年で一番暑い時期は過ぎたはずなのに、モンスーンに入ったという気配はまだない。湿度が10数%から30%とやや増えた程度だ。だが僅か15%くらい増えた湿度がくせ者らしく、体感温度は47度だと。実際、家の中にいても空気は「熱くて」重い。エアコンを利かせて27度設定にしている部屋から外へ出るにはつらいものがある。
にもかかわらず、隣家のパキスタン人家族は庭に面したベランダに椅子を持ち出してくつろいでいる。日陰であって大きな扇風機からの風があるとはいえ、吹き付ける熱気に当たっていれば干物になると想うのだ。やはり根本的にパキスタン、それも南の方の住人とオバハンたちでは暑さに対しての感覚が異なるようだ。

帯広では40度を超したと。他の北海道全般でも5月というのに真夏日という。
ところが当地イスラマバードでは5月下旬というのに(パキスタンとしては)冷涼な日(30度台前半)が続いていて、有り難さを通り越し、驚愕している。昨日の朝などは16度で肌寒いくらいだった。 北海道の人たちが真夏日に度肝を抜かれているようなものかしらんと想ってみたりもするが。
とにかく今夏のイスラマバードは暑くない、まだ一度も扇風機すら回していない。このぶんでは6月になればバザールに溢れるマンゴーにも甘さが足りないだろうと案じてしまう。
パキスタンの暑さは日本の比ではない、例年なら4月下旬から9月下旬までの6ヶ月間、ひたすら体力の消耗を避けて暮らすオバハンだが、今年はまだ元気いっぱいで動き廻っている。
とは言え、いつまで動き回れるのかという不安と背中合わせの年齢だ。

45年もの昔、初めてパキスタンへ登山に来た時の仲間から度々、メールを貰う。
「パキスタンやインドにイスラム国が出来て、日常に変化はあるのか?危険ではないのか」と案じるメールであり、ついでにイスラーム教徒についてのコメント等がついていた。 曰く、「原理主義を守るだけで時代の進歩、変化を取り入れられない。支配者(家長、男)の既得権。新しい信者は獲得するが、改宗する者には死をという身勝手さ」と。 彼女のイスラーム観はイスラーム教徒以外の多くの人(多くの日本人)もが感じていることだろうが、しっかり当たっているようで、まったく外れている。
まずは、聖典を疑うことなく日常生活を営むことこそが真のイスラーム教徒なのだという事実。神から預言者ムハンマッドへ下された啓示が聖典アル・クラーンであり、預言者ムハンマッドの言行録はハディーズという聖典になっていて、イスラーム教徒はその2つの聖典通りに日常を過ごせば間違いはないとされている。世界が目まぐるしく動く現代に1400年前の暮らしに疑問を抱くなと言う方がチト無理があると思うのは、オバハンが中途半端人間であるからであろう。 
だが、聖典に疑問を抱くことなく生きるのがイスラーム教徒であることを忘れてはならない。

きょうは断食月16日目かな、毎年この断食月になるとスタッフにむかっ腹を立て、「クビにしてやるぅ~」と思っても、自分が雇っているわけでもないスタッフなので首にも出来ず、思いっきりストレスを貯めこむ。とやかく言うても始まらん!とは言いつつ、昼間はず~~~っと寝ているスタッフたちの日常にはムカついている。そやからコイツらは進歩がなく貧乏人のままやんケ!と、品なく言い放ちたい気にもなる。

昨夜は1時間くらい雨風、気温が一気に下がった。毎朝5時半過ぎ朝陽が登る頃を目安に、屋上で15分くらいコーヒーを楽しむ。昨年は4月下旬には40℃になっていたが、今年はまだ1度も40℃になっていない。この朝のコーヒータイムで心の平安を保っている。

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