2015年01月

イスラーム国で拉致されている日本人2人に、殺害予告が出たと……  欧米日とは信じるところの正義や基準が対立している武装勢力との間で、これまでこうした事件の起こらなかった方が不思議なくらいの世界情勢ではあるまいか。

そもそも…と言うべきか……イスラーム国は、イラクやシリアに攻勢をかけていたアメリカが育てたとも言える。アフガンとパキスタンの武装勢力も1980年代~1990年代にかけて、アメリカが莫大な資金と支援をして育てた。アフガンの山道で武器弾薬を運ぶため、世界の駄馬相場が替わったと言うくらい駄馬を輸入までした。アメリカは常に自分たちに都合の良い勢力と結びつき、自分たちの言うことを聞かず、不都合になったら「切り捨て」て来た。
アメリカによる「テロは許さない」とする、イラクやシリアに対する爆撃の範囲は次第に拡大し、「イスラーム国」の拠点を空爆、昨秋9月にはフランスも空爆に参加し、軍事行動やその支援に参加する国も増加した結果、イスラーム国が硬化して行ったようにも想える。

かって湾岸戦争の時、日本政府が多国籍軍の一員として支援金を出した。2回目は自衛隊の派遣をした。自衛隊の任務は後方支援だったと言うが、それでも一部のイスラーム教徒たちからは、日本には失望したと言われた記憶がある。日本政府が支援する2億ドルは、人道支援に使われると言うが、今はどんな理由を述べてもイスラーム国の人間には通じまい。いま彼らは自分たちの信ずるところによって行動しているだけだろう。

ジャーナリストの後藤さんは「ガイドに騙された」と言っていると、ネットのニュースで見た。オバハンたちは同時多発テロの後から数年にわたり約600日をアフガンで過ごした。 アフガンも安全とは言い難かった…… 息子のように何年間も可愛がっていた現地の者でさえも、首都から遠出の度に、「もしかしたら?拉致されるかも」と常に疑念を抱えていた。いま現在、誘拐も拉致もされずにパキスタンで好き勝手をほざいておられるのは、ある意味、運が良かっただけだと知っている。
危険地帯とは、そうした「誘拐・拉致」とは常に背中合わせにあり、事故は起こりうるからだ。

フランスの風刺紙では、長年、預言者ムハンマッドを笑いものにして来たが、かのローマ法王も、「他者の信仰を もてあそんではならない」と述べ、表現の自由にも一定の限度があるとの考えを示している。自分に人間としての尊厳があるならば、他人の尊厳もしかりであろう。 ...
世界人口71億人のうちイスラーム教徒は16億人、22%も占めている。産児制限率が低いイスラーム教徒の人口の伸びには、今後、著しいものがあるだろう。15年後にはイスラーム教徒の人口比率は26%を超えるいう推計がある。自分たちと価値も基準も、正義も違う人間が隣人になる時代なのだ。

どのチャンネルを回しても、TVではガソリン不足のニュースばかりだ。
人口の多いラホールではガソリン不足が特に酷く、長蛇の列。人びとはコーラなどの空きボトルを何個も手にし、中には9時間も並んでいる人もあるとか。 パキスタン人には喫煙者が多い、こんな状態でよくも事故にならないものだとオバハンは呆れるよりも、感心をしている。

ガソリンスタンドには20日分の備蓄が義務付けられているとか言うが、備蓄はないようだ。だが、石油会社からは毎日、細々とでもガソリンが届くようなので、ガソリンスタンドへの偵察が欠かせない。
幸い日曜日は市内を走る車両も少なく、我が家ではさほどの時間も並ばずにガソリンが購入できた(購入後、1時間もしたら長蛇の列になっていたが)

先日、8日後にはガソリン不足の混乱が収まると報道があったが、事態は解消はされず通勤の足は混乱を極めたままだ。市内を走るタクシーなどは通常の数倍だと言い、我が事務所のスタッフたちも燃料不足に帰宅もままならず泊まり込んでいる。(だからフランス風刺紙への抗議デモどころではないようだ)
このパキスタンでは、何をどこまで信じれば良いのか…と、不安は尽きない。
電気もなく、水もなく、ガソリンもなく・・・こんな状態でも暴動にならないパキスタン国民は、なんと辛抱強いのか!

5日ほど前からガソリンスタンドに並ぶ車の列が長い。
約6年半ほど前には1バレル147$もした原油が、今では3分の1にまで下がっている。消費者としては単純に喜びたいが、まだまだ下がると見たものかパキスタンの石油会社は輸入を見合わせていると。そのせいで国内消費分のガソリン類がないらしい。 一部、報道によるとガソリン類は、この先1週間は入荷がないというから、不急不要の者たちは賢明にも車の使用を見合わせたようだ。

そのせいで昨日のフランスの風刺週刊紙に対するデモは、予想より大幅に低調だった。
朝早くから主要道路にはデモ隊を阻止するためにコンテナが並び、メールでも危険地域の警戒警報が出、学校も早めに終業となったが、国内には燃料が無いとあって、抗議の人々は首都近くまでやって来れなかったようだ。
大昔にはアメリカ大使館の焼き討ちなどがあったイスラマバードだが、フランス大使館の焼き討ちなんてことになったら大変だ。国内にガソリンなどの燃料がなかったことが、政府にとっては幸いだった。
もっともカラチなどでは負傷者が出ているが、概ね国内各地は静かな金曜礼拝日で終わった。

おまけに2ヶ月ぶりの雨を4日前に見たので、メトロの大工事で舞い上がっていた土埃も落ち、排気ガスもないせいで久々に澄んだ空気の町になった。澄んだ空気の下、陽射しが眩い。
明日の日曜日も、走る車の少ない静かな休日となりそうだ。

9日には当地発行のヘラルド・トリビューンで記事ナシ、一部白紙の新聞が発行されたが、昨14日は、当地発行のニューヨーク・タイムズで18㎝×23㎝くらいが空白で発行された。 空白部分にはフランスの風刺週刊紙の最新号について、(最新号の表紙は「すべては許される」というタイトル)の記事が掲載されるはずだったと。なお、記事ナシ空白部の下には「この記事は当紙と提携するパキスタンの発行元が削除した。インターナショナル・ニューヨーク・タイムズとその編集部は記事削除に関与していない」と明記されている。

13日、ペシャワルでは仏週刊紙を襲撃した犯人?兄弟を支持する集会が開かれたと。政府は国民を刺激する記事に触れさせまいと躍起のようだが、この分では金曜礼拝日の16日には大きな抗議集会となりそうだ。 
パキスタンだけではなく、イスラーム教が国教として定められている国々では、預言者ムハンマドや聖典(コーラン)を侮辱すると、冒とく罪に問われ、死刑宣告を受ける。そういう事実のあることを非イスラーム国の人々は知るべきだと思う。
すでにエジプトの宗務裁定庁は13日、「世界の15億人のイスラム教徒の反感を招く、正当化できない行為だ」とする声明を発表している。この分ではイランあたりから週刊紙の編集長などにファトワ(宗教見解、宗教令)で死刑宣告が出されるのではなかろうか。

15年ほど前から愛読しているブログの一つに、「マスコミに載らない海外記事」というのがある。ここには何時も秀逸な記事が翻訳されて載っている。以下に、2つの記事を紹介しておく。
①  継続中の対テロ世界戦争芝居、次場面の幕は上がった
②  シャルリー・エブド襲撃後の“言論の自由”という偽善


それにしても・・・・・・「私たちは表現したいものを表現しているだけ」「すべては許される」というフランスの風刺週刊紙は傲慢ではなかろうか・・・

フランスで起きたテロ事件、日本ではどんなふうに報道されているのかは知らない。が、おそらく……多くの日本人には、遠い国の出来事くらいにしか感じられないのだろう。 だが、はたしてそれで良いのか?

アノニマス(インターネット上の言論の自由などを掲げ活動する、国際的ハッカー集団。英語で「匿名」を意味し、若者やコンピューター技術者らが連帯し顧客情報を流出させたりしている)という謎のハッカー集団が、アルカイダやイスラーム国に宣戦を布告したという。 宣戦の布告理由は、表現の自由を侵害したからというものであるらしいが、表現の自由という価値観は、欧米日などから見た場合のものではないのか?
それをいうならイスラーム側の理論にも、西欧に対して「言うべき自由はある」。

テロ集団に襲われた週刊新聞社は、特別号を発行。テロや暴力に屈しない姿勢を示すという。銃撃で死亡した風刺漫画家たちの作品や、預言者ムハンマッドのテロを容認しない悲しそうな風刺画も掲載するという。編集者の心意気は分るが、火に油を注ぐだけでは?と案じる。
西欧 vs イスラムという文化の対立は、永遠に平行線である。
それぞれ固有の文化や価値観は、互いにそれを敬い認め合うしかない。ヘイトスピーチやテロは認められないが、画一化された価値観や文化はぬるま湯的ではなかろうか? 

いつだったか読んだ、元中国大使だった丹羽宇一郎氏の談話が凄く心に残っている。 日本海で獲った「ナマコは弱りやすく漁師が沖合で捕っても港に着くまでにほとんどが死んでしまうが、そのナマコの群れの中にカニを一匹入れておくと、生きたまま持って帰れるという。科学的にはナマコの天敵はカニではないようだが、『何事も新鮮であり続けるためには天敵(刺激)が必要』との例え話として紹介されていた。西欧にとってイスラームが天敵である筈はないが、それでも同一の価値観内には緊張も進歩もないのではないかしらん。

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