2013年05月

今夏は5月に入ってもさほど気温が上がらず身体に楽だったが、ついに先週から40℃を超え一気に暑くなった。きのうは45℃くらいあった様子で寝苦しい夜を過ごした。 停電のない日は総選挙投票日から3日間半だけで、再び停電の日々が始まったが、停電中は昨年みつけた蓄電式の小さな優れものの扇風機で凌いでいる。しかし日に8時間の停電はいささか厳しい。

昨日までの3日間は頭上をヘリコプターが「何かを警戒」して煩かった。先一昨日と昨日の昼間は携帯電話も一時的に数時間止められてあったという厳重警戒ぶり。 学校からも子供たちは早めの帰宅。先一昨日から何事なのかと思っていたら、中国から首相サマがおみえになっていると。

中国の首相に対するパキスタンの態度には、アメリカに対するよりも心遣いが見える。中国の首相は2日間しかいなかったが、来パの前日から超厳戒態勢だものな…
経済的な見通しがゼロのパキスタンとしては中国に対し、たくさんの要望があるに違いない。次期首相シャリフは中国に対して民生用の原子力分野での協力を要請したと伝えられているが、シャリフは前政権時代、インドに対抗して核実験を強行するなど、原子力に対して関心が深い。アメリカがインドの原子力発電に協力をするのだから、中国にはパキスタンへの協力があってしかるべきだと考えているようだ。ある意味、シャリフの立場から見れば中国に対する要請は当然ともみられる。

そして民生用の原子力(発電)があれば…この電力不足が解消されるのであろうか? そもそも電力不足の原因は、政府関係事務所が電気代を数年間滞納し(ザルダリがガメ込んで払わなかったので)電力会社が電気を回さないからという。 まったくザルダリ大統領の5年間は国民にとっても悪夢だったが、どの政権も(オバハンが知っている30数年間では)政争に負け冷や飯を喰っていた時のマイナスを取り戻そうと、ガメ込む人間ばかりだ… 
特に、このPPPは前政権の折もガメ込むだけガメ込んだ。「ガメ取れる間に取る。次のチャンスはないかもしれないから」と、口に出して平気で言う人間もいるくらいだ。いやはや、そういう人間がこのパキスタンでは政権に就く。

オバハンは軍国主義者ではないが、今まで2回体験したパキスタンの軍事政権には嫌悪感を持っていない。軍事政権時代の方が圧倒的に統制がとれ(当たり前か…) わいろの横行も少ない。

テロなどの脅威で、まだ選挙(投票)に至っていない地域もあり、選挙違反も多々あったようだが、総選挙の結果は出た。ザルダリ政権下での首相以下、大物が軒並み落選した。

この5年間PPPパキスタン人民党が率いる政権下、国民はよく耐えたと思う。国民はどこまで我慢をするのか?と毎日のように思っていたから、暴動にならなかったのが本当に不思議だった。
思い返せば、この5年間の物価の値上がり。それと共に電気なし、ガスなし、燃料なし、水なし日常生活。首都でも8時間、都市部でも毎日10時間の停電。すこし郊外へ行けば16~20時間の停電では、軽工業や基幹産業の綿織り産業等々は稼働出来なかった(マーケットでは日常品も品薄か、高額になっていた)
 
その結果、大手生産業者の多くは人件費が安く、パキスタンよりは遙かに電力事情の良いバングラデッシュへ生産工場を移した。ちょうど1年前にエチオピアへ行く機会があったが、おなじ飛行機で乗り合わせたビジネスマンもエチオピアで綿製品を作っていると言っていた。

一度、生産基地を海外へ移してしまえば…日本と同じで空洞化が進み、国内では失業者がますます増える。強盗や誘拐も多く、うかうか暮らしてはいられないとパキスタン人たちでさえも嘆く生活だ。
本当にPPPパキスタン人民党は、国民のためには何もしない政権だった。賄賂を取り込む以外は、何もしなかった!!!

親の代からのPPP支持者だったという人たちの多くも、PPPを見限ったと言う。今回の総選挙の結果が如実にそれを表している。シャリフ元首相が3回目の政権に戻る、少しはましな生活が戻って来るのだろうか? 
とりあえず11日投票日から首都では停電がない。久々に停電のない暮らし、重い発電機の音が心臓を圧迫することもなく、電気製品の故障に頭を悩ませなくてもよい日が何日間、続くのかな?

ただいま開票中。最大野党PML(N)イスラム教徒連盟、元首相ナワズ・シャリフが率いる党が事前の世論調査通りで圧勝。小選挙区制で争われている下院の一般議席272のうち263議席に当落が出て、PMLは現在126席を確保、他の政党に大差をつけている。小選挙区での結果なので人口の約半分を有するパンジャーブ州では、大土地所有者でもあるシャリフ一族はダントツに強い。大土地所有者=支配者(藩主)みたいなものだから… 
ともあれPML(N)中道右派シャリフはアメリカ嫌いだから、どんな政権運営をするのかな… ザルダリ(ブット)率いるPPPは超腐敗政権だったが、2度の首相をつとめたシャリフ(一族)も50歩100歩だったし… いやいやPPPほど酷くはなかったか…

正義党は前回の選挙から5年間、本当に地道に「腐敗政権」に対して批判を続け、支援者を増やしながら頑張って来たと思う。しかし大都市でしか票を伸ばせないので、1ヶ月くらい前の世論調査では20席まで行くか、行かないか…と見られていた。ただ、選挙戦終盤で党首のイムラーン・カーンが負傷、同情票も集まって34席にはなっている。 シャリフ元首相は「すべての政党に対話を呼びかける」と語っているが、イムラン・カーンは国民の側に立って、あくまで「反政府」の立場を貫けるのかな?

今年1月に大規模な反政府集会を開いてPPPパキスタン人民党政権を揺さぶったカドリ氏は、選挙をボイコット。イスラマバードの中心で、「選挙には行くな!」と市民に呼びかける等、相変わらず過激な活動をしている。 5年前の総選挙ではイムラン・カーンも(理由は異なるが)選挙をボイコットし、腐敗政府への批判を重ねていた。

いまフト、TVの画面を見ていたら投票所に設置してあるカメラが、1人で何枚かの投票用紙を箱に入れようとして警官と揉み合いしているのが映っていた。田舎では、こうした不正投票がいっぱいあって、(例)有権者が8000人しかないのに投票が1万以上というのがよくあると…

軍や警察など約60万人が、全国約7万か所の投票所の警護を行った中で、だいたい投票が終わった。ウチの事務所では本籍地まで日帰り可能な10人近くが投票に行った模様。選挙委員会の予想は投票率が45%くらいというが、そんなになるかしら??? 
今回の選挙で正義党のイムラーン・カーンが果たした役割は、今まで選挙に関心を持たなかった田舎の若者にまで「選挙」に対する関心を持たせたことではないかと言われている。確かにウチの事務所でも若い者は正義党のイムランに1票を入れたいというが、田舎まで帰れない者が大半だ。いま表通りで正義党の候補者(立候補地区48番)が他党を圧倒しているというので、大歓声が上がった!

旧北西辺境州では選挙妨害をするタリバーンに誘拐されたのか、投票所の責任者が投票用紙とともに行方不明になっていると。数日前には偽の投票用紙を山のように積み込んだ車が検問に捕まったとか、相変わらずのパキスタンだ。投票用紙の偽造などは、ごくごく普通???の現象??で、毎回、懲りずに投票用紙の偽造をする輩がいるんだなぁ…

現在、開票中。今夜中には大勢が判明する。

パキスタン総選挙の投票日は明日11日、選挙活動は9日の午後12時(10日の0時)まで。
最後の選挙アピールは、自宅にいても「こんなにやかましいのは初めて、寝られないわ…」と思うくらいに凄かった。 それが夜12時とともにピタリと静まりかえって、車の音もしない普段の静けさ。いやいや驚いた。12時を過ぎれば選挙違反となるので、ピタっと終わって当然なのだが。

正義党々首のイムラーン・カーンが7日にラホールで高さ4m半の演台から落ち、脊椎の2ヶ所を損傷したというので首都での最後のアピールは急遽中止になったが、党首なしでも正義党の集会は物凄い人出だった。パキスタン人の血は熱い! 選挙戦の終盤で動けなくなった正義党に対する同情を一気に集めた感じ。で、ごく普通の人々が子供まで連れて集会に参加していた。どこの集会でも、普段ならお金で動員されたと想えるような人が多いのに…そういう人は見られなかった。

イムラーン・カーンは病室のベッドの上で「パキスタンを良くするまでは死んでも死にきれない」とメッセージ。
パキスタン人の血は熱いと書いたが、政治家たちは風見鶏、超現実的だ。昨秋は評判随一の正義党へ雪崩を打って入党し、選挙戦突入前には「正義党はどこまでも反政府政党だ」と判断するや、たくさんの人が離党し無所属で出馬した。当選のあかつきには与党となりそうな政党へちゃっかり入るつもりだという…まぁ、それも世渡りではあるが…

ということでパキスタン総選挙活動は終わって、明日を待つばかり。市内は走る車も少なく静まり返っている。パキスタンでは建国以来65年間で3度ものクーデター、約30年が軍事政権だったが、今回はこれでメデタク投票による政権移行なのかな。

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