2012年12月

(AFPからの抜粋 要旨)

『パキスタンでは今月17日以降、小児350万人以上がポリオワクチンの接種を受ける機会を逃した――世界保健機関(World Health Organization、WHO)の関係者がAFPに語った』と。

『感染すれば短時間のうちに手足が弛緩してまひする残酷な病気から子どもたちを守るため、パキスタンでは国連(UN)の支援の下でポリオ撲滅計画が実施されている。しかし17日に始まった接種プログラムの最初の週にシンド(Sindh)州の州都カラチ(Karachi)と同国北西部でワクチン接種プログラムに従事していた9人が相次いで殺害されたことからプログラムに遅延が生じている。

パキスタンにおけるポリオ撲滅計画。ワクチン接種が必要な小児は1850万人だが、実際に接種を受けたのは1490万人。350万人以上がワクチンを受けられなかったことになる』と。

『反政府イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(Tehreek-e-Taliban Pakistan、TTP)」はこれまでにもワクチン接種チームを脅迫しており、今年6月にはスパイ活動を隠すためにワクチン接種が行われているとして北西部族地域のワジリスタン(Waziristan)で接種を禁止した。ただし、先週相次いだ襲撃についてTTPは関与を否定している。

一方、数年前からパキスタンの人々の間でワクチンへの疑念が広がっており、ポリオ根絶プログラムにも影響が出ている。十分な教育を受けておらず他者の影響を受けやすい親の中には、ワクチンに関する「荒唐無稽な陰謀説」を信じ込んでワクチンに拒否感を持つ人も多い』と。

毎日毎日、パキスタンでは心の沈む重いニュースばかりだ。 昨日の新聞トップニュースは、南部カラチと北西部ペシャワルで17日から18日にかけ、子どもたちへの予防接種を実施していた女性計6人が銃撃を受けて死亡したと。 また今夏の7月にはカラチ市内で、予防接種に従事していたWHOの医師と運転手が襲われ、負傷していた等。  それらへのテロ頻発でバルチスタン州では「予防接種従事者の安全への脅威」を理由に無期限で予防接種を停止すると。

このポリオ予防接種には日本政府もパキスタンに対し約9億円の無償資金協力と、50億円近い借款を出して絶滅に力を注いでいる。 世界中でのポリオ発症は99%も減少したらしいが、なかなか撲滅とまではいかないらしく、現在、強力な毒性を持つと言われている野生株ウィルスが残っているのはパキスタンとアフガン、アフリカの何処だったか…1ヶ国の世界では3ヶ国だけという。

なぜ、この予防接種従事者たちが武装勢力に襲われているか??? CNNによれば、「昨年のオサマビン殺害作戦に先立ち、その潜伏先を確認するのが目的で、米中央情報局(CIA)が予防接種を装って家族らのDNAを採取した。そしてこれをきっかけに予防接種に対して懐疑的な見方が広がっていた」と。

それにしても… タリバーンと称する(している)武装勢力たちは… 本来の(本物の)タリバーンとはますますかけ離れて行くわ… 報道が簡便に言うところのタリバーンはタリバーンではないのに。タリバーン連合と称してはいる武装勢力は〇〇団に等しい面ばかりが目立つ。 女子供等の弱者を守るのがタリバーンの筈なのにな…

夕方のニュースでは、予防接種者がさらに3人が殺されたと言っている。

タイに出発した10日夜から小雨が降り始め、1週間以上も雨模様の寒空が続いている。首都から僅か1時間のマリー丘陵や(一部は3000m以上ある) カシミール、ギルギットも当然のように大雪になっている。はやー5℃と厳冬を迎えたギルギットから運んできた犬2匹、凍死させなくって本当に良かったと思う。実はアフガンに事務所を構えていた数年前には、-15℃にもなる厳冬に1匹を凍死させているので、ギルギットにおいてあった若くはない犬たちが本当に心配だった。 
今冬は数年ぶりに12月からの雨で、郊外へ行ったら早々と小麦の芽が出て翡翠のような緑を広げていた。あんなに素晴らしい緑の翡翠ならば、きっと高価であろう……と、宝石にはとんと縁のないオバハンはアホな想いにとらわれた。

それにしても… パキスタンでもアフガンでも治安は悪い…  首都に暮らす外国人たちの多くはクリスマスが近いこともあって一斉に海外へ出るようだ。普段ならば冬休みが10日間くらいと短い筈なのに、「外国人の方々はパキスタンから脱出して下さい!」とばかりに21日間もの休みだ… 
ペシャワール空港でのテロ(いろいろあるから詳細は書かない)、カーブルで続くテロ… 安心して道を歩けないのは辛い。特にオバハンなどは超ビビりなので外出時には真剣に周囲の状況把握に力が入る。「いま弾の音がしたらあの壁際に飛び込む。あの大きな側溝へ飛び込む… あのガラスの前には立たない… 等々」  昔は「危機管理」と称して、それらの緊張感も好きだったが、歳をとって身体が動かなくなって来たせいか、パキスタンでの緊張感がしんどくなって来たようだ。
とはいえ、まだまだやり残したことがあり、パキスタンを離れる気にはなれないが。

今回の総選挙、野田首相の電撃??解散で本籍地に投票用紙の請求をするには時間が足らず、投票が出来なかった。一般的には海外在住者は大使館や領事館などへ行き投票をする。もっとも比例投票のみしか出来ないのだが、投票会場になっている大使館や領事館まで行くについては、そこへ遠い人には負担が大きい。 しかし世界的に見て治安の悪い国など、ごくごく一部の国では投票が出来なかったのは『一票格差』以前の問題で、本当に残念だ。
今回は治安の悪化、大使館の手間暇の割には投票する人が少ないから等の因(だろうとオバハンは考えているが) くっだらないイベントに経費をかけるより、国民の権利に経費をかけて欲しい!!

実はパキスタンでは投票が出来ないが、海外で選挙登録を済ませてあるのでと3年ぶりに10日夜から休暇を兼ねて4日間だけをタイで過ごした。しかし投票は10日に締め切られていて「権利の行使」は出来なかった。タイでは約10万人の日本人が居ると言うが、いったい何人が「国民の義務と権利」について考え投票に行ったものか?!?!

それにしてもこの3年間のバンコックの進歩は凄いモノだった。たまたま日本人が一番多く暮らす地域のど真ん中で高級なサービスアパート(3ベッドルームと大きな居間、10人掛けの食卓、台所等々、大型の冷凍冷蔵庫、全自動洗濯機と乾燥機等々、何もかもの家具付。たぶん日本のビジネスホテルならば15室は作れそうなスペース)に滞在したが、1日5000円にも満たず日本に居る暮らし以上に便利だった。 小さな地域に日本食品店が4軒もあり、周りは殆どが日本食店。 年配の夫婦連れが何組も日本食品店で買い物をしているのを見ながら、少しばかりのお金があり、海外生活が苦でない人は日本から脱出するのも良い選択肢だと想ったり。

そして総選挙の結果は見えていたにも関わらず、やはり衝撃的だった。民主党の政権運営が酷過ぎたので、これからの自民党政権の日本運営も結構マシに見えるのか???と思ってみたり。安倍(自民党)の大企業に対するバラマキ政策、右傾化(憲法改正)、原発再開…  オバハンなどは先が短いが、少し長期的に見るならば治安が良く物価の安い国への移住(移転等)を考えるべきかも。
治安の悪化で自由に動き回れない上、電気やガスもないパキスタン生活に発展の可能性がゼロに近い近年、オバハンの心がチョッピリ揺らいだ4日間だった。

さて今回の総選挙、パキスタンは現在治安も悪く選挙管理の手数を省くとかもあって、選挙投票の出来ない数少ない国の一つである。どうしても投票したければ近くの国タイへ行くか、本籍地へ投票用紙を請求し取り寄せ、さらに送り返さねばならないので今回は時間的にも間に合わない。
前回の選挙ではオバハンの主唱するNPO日パ・ウエルフェアー・アソシエーションの理事が出馬したので、パキスタンからも大いに応援し帰日する人に投票用紙を持って帰ってもらい成田から投函して頂いたが、今回は生まれて初めて投票できない。 せめて現在の日本(政治家、政策)に対する批判を「白紙」投票をすることで表したいと思っていたのだが。

それにしても治安は良くない。特にNPO日パ・ウエルフェアー・アソシエーションの母子センターがあるギルギットの治安に関して言えば、アフガニスタンよりう~~んと悪いと言える。

-15℃にもなるギルギットの冬を前に(老いた)番犬たちを暖かいイスラマバードへの避難作戦。他人に任せるわけにも行かず、新たなプロジェクトに際しての会議を持つ…という理由もつけて息子がギルギットヘ18時間もの陸路を走って出かけたが… カラコルム・ハイウエーを走るにも制限がアリアリ。検問が異常に増えたこと等、厳戒態勢。

「ギルギットの町はスンニー派とシーア派にきっぱりと分かれ、大通りを挟んで双方ともに臨戦態勢。どこから弾が飛んで来るのかも判らん~  町を走る車はなく、たまに走っている車はバザールの中でも全力走行。 センターの裏では(音からして)手榴弾を投げたヤツがあって爆発、恐怖のどん底~~。 もう2度とギルギットヘは行かん~~」と大騒ぎ。 息子はこの2ヶ月余で既に2回も「車の窓ガラスを割られたり、5m至近距離で銃撃に巻き込まれている」ので、3度目はどうなることかと怯えている。
しかし…そういうギルギットの町で人々は生きている。そして、この悪い治安状況はパキスタン全土ではないけれど、アフ・パク国境に近いところは似たようなものであろう… 
選挙における投票のみならず、学校へすらも安心して行けない子供たちの初等教育、特に算数教室は村々での必要性をますます感じる。

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