2011年05月

パキスタンの経済と軍事がアメリカ様に「おんぶと抱っこ」で成り立っている、危うい国だということは多くの人が知っている。だとしても、ここまでアメリカに好き勝手をやらせて良いものか! とは言え、自分で歩けないのだから仕方がないのかなぁ…  日本の(今後の)電気事情と同じで、国民が苦労と不便を覚悟すれば、そして国家指導者たちが僅かばかりパキスタン国民のことを考えてくれれば、ここまで酷くはならなかったかも。

10数人の武装勢力によるカラチ海軍基地襲撃で思い出したのは、一昨年(2009年10月)のラワルピンディGHQ襲撃だ。あの事件と今回の襲撃事件の根っ子はまったく同じだと、オバハンは思っている。
当時、あの事件の裏面については、「アメリカがパキスタンの核兵器管理権を持とうとするため」に混乱と不安定を印象づけたとの報道が強かった。  
GHQ襲撃も海軍基地襲撃も大きく見るならば、アメリカによるワンパターンの作戦だ。単なる武装勢力(タリバーンたち)にあそこまで金をかけた襲撃ができるものか!!  元首相のナワーズ・シャリフなどは大声で、「アメリカはパキスタンに混乱を意図的に起こし、核の管理権を得ようとしている」と、非難している。
昨日、カラチから帰って来た事務所の者によると、「襲撃者たちは基地に侵入した後、哨戒機の手前にズラ~~と並んでいた数々の飛行機にはまったく見向きもせず、真っ直ぐ哨戒機のみを狙って襲撃しています。アメリカ供与の哨戒機の直ぐ傍には中国の管理による航空技術工場があり、襲撃者たちはそれも大破、燃やし他には手をつけていません。想うに強大な力を持ちつつある中国に、アメリカの哨戒機を『研究』されたくはなかったのでしょう」と。 パキスタンにとっては中国もアメリカも大切なスポンサーだとは思うが、アメリカと中国に挟まれたパキスタンは、米中冷戦の舞台になって行きそうだ。


悪い冗談としか思えないニュース、1つ。アメリカの映画会社が、「米特殊部隊による国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者の殺害作戦が映画化」だって… 表現の自由があるアメリカ故に、なんでもありとは思うが…  かって、イラク駐留米軍の爆発物処理班を描いて2010年にアカデミー賞の作品賞・監督賞を受賞した監督がメガホンを取るらしいが、ここまで行けば国威掲揚・国民の戦意高揚、かって戦時中の日本なみに最悪の気がするが。 ついで「殺していない」オサマ・ビンラディンをアメリカが抹殺したとの強い印象をアメリカ国民へ植え付けるために。ヤレヤレ~~~ご苦労なこった!

昨日のTTP(タリバーン運動)によるカラチ海軍基地襲撃事件は、一昨日の夜から昨日朝にかけての銃撃戦と、13回にもおよぶ爆破で死傷者多数であったと報道されてはいたが、その銃撃応酬が17時間にもおよんだと、今朝は新聞を見て驚きが勝った。 たかが10数人の反政府武装勢力と正規の「海軍」が戦って…17時間もの応酬の上、アメリカから供与された対潜哨戒機だったかなを2機爆破されたと。 武装勢力側は自動小銃やロケット砲、手りゅう弾などで武装した上、下水道などを通って基地内に侵入だと報道されているが…内に協力者がいなければ難しい作戦だったろう。
いずれにせよ短期的に見るならば… アメリカによるオサマ・ビン・ラディンの殺害??は、今のところ報復の連鎖になりつつあるようだ。ただしアメリカが撤退(または駐留の大幅縮小)をするならば、事態は変わるのかも。

昨日の英紙フィナンシャル・タイムズでは、「パキスタンが中国に対しインド洋(アラビア海)に面するグワダル港に海軍基地を建設するよう要請した」と報じているとか。 今年に入ってからの米パ関係は日増しに悪化しつつあり、この要請にはアメリカや敵国インドを牽制する狙いがあるのは確実だろう。
すでに中国は、中東やアフリカからの石油等を運ぶ海洋交通路を確保するため、インド洋周辺国の港湾建設を(大規模支援を含めて)進めて来た。(中国はインドを取り巻く国に重要な港を(建設し)押さえることで支援国を経済的に取り込み、かつ軍事的にも睨みも利かせようとしている。確かインド洋を取り巻く真珠のネックレスに例えた名前のプロジェクトと表現されていたが…) で、中国にはグワダル港の整備と大開発が10年近く前から任されていた(オバハンは例によって物好きにも、港湾建設開始直前のグワダル港へ軍や政府からの特別許可を貰い、警察からの警護までつけてもらって調査に行った)  

グワダル港はパキスタン国内で唯一、大型船が出入りできる港だし、中国はグワダル港からパキスタン国内を縦断して中国西部に至る石油パイプラインの建設を目論んで(カラコルム・ハイウエーの拡張をも現在、実施)。 そのグワダル港へ、今度は海軍基地を建設するように中国へ要請だってぇ~!! グワダルはイランに至近、ペルシャ湾にも近い要衝の地なのでアメリカの反応が見ものだわ…

いみじくも、「オサマ・ビン・ラディンを巡るアメリカの手前勝手」という品のない文章を書き散らした日、http://blogs.yahoo.co.jp/kimagure_obahan/64483360.html ヒロシさんという方の書き込みがあったように、「パキスタン政府はアメリカの支援を断るべきでしょう。代わりに中国からもらったらどうですか? アメリカが折れてきますよ」ということなのだろう。 おなじヤルならパキスタンも、「あるいは北朝鮮みたいに核技術の移転でアメリカを恫喝しては? 」との意見にも理解ができるが、個人のポケットへ入る莫大なる金が最優先の当国指導者たちには、米中を天秤にかけながら、よりポケットがいっぱいになる方へ動くという見識しかないだろう。残念なことに…

オバマ大統領には最初の最初から、「平和」についての期待はしていなかったが、それにしても戦闘好きのブッシュに勝るとも劣らない大統領で、そういう意味では期待以上と言えるのかも…  そもそもオバマになって半年もしない間にアフガンとパキスタン国境での無人機による空爆回数はブッシュを上回った。あの段階で「ひっど~~~い大統領が生まれた」と当地の人の多くも感じたかも。

そのオバマに大統領就任直後のノーベル平和賞だったから世界中が驚愕したのも無理はない。今にして思えば、「オバマ大統領が賞にふさわしい行動を取っていくことを期待したい」とした、ノーベル賞委員会の希望が理解できる気もするが…  しかし…「核兵器の全廃に向けた外交を推進する」と表明しただけで平和に貢献したと考えたノーベル委員会の程度は大甘ちゃん過ぎたとオバハンは思うが、世界はなおもオバマに(経済の上向く)期待等々をしているのかな…

そもそも、「戦争はどのような形であれ昔から人類とともにあった。干ばつや疫病のように現実にあるものだった。戦争は自己防衛の最終手段として適正な武力により、可能な限り非戦闘員は犠牲にしないという条件に合致する場合のみ正当化される」との趣旨を演説したオバマだもの… 期待する方がどうかしていたわな。 この伝でいくとオバマ(アメリカ)は何をしても正当性があるということになり、泥棒にも3分の理に等しい。

当地では未だにオサマ・ビン・ラディン関係の新たなる発見(発表)が続いていて、「落とし前」のつけ方に苦慮でもしているのか。 さらには、ここに来てオサマ・ビン・ラディン(の盟友とでも言えば良いのかな)タリバーンの最高指導者オマル師がパキスタン国内で殺害されたとの情報があるとか。 
さぁアメリカはどん「な落とし前」をつけてアフガンやパキスタンから撤退をするつもりか。 第一次湾岸戦争後もサウジに駐屯したままのアメリカを見れば、易々とパキスタンを手放してくれるとは思えないのだが。

オサマ事件後、TTP(タリバーン連合だか、タリバーン運動だか)の「報復」と称するテロが横行するようになった。ここ1年近く減っていたテロが急激に増えたことで、またまた要注意の世相になった。 昨夜もカラチの海軍航空基地へ武装集団が侵入、米国が供与したP3C哨戒機、2機が破壊され海軍兵5人?が死亡、戦闘は今朝まで続いたとか。 武装集団は10人から15人くらいで少なくとも13回もの爆発が起こり派手な火の手の上がった写真等が新聞やTVには掲載されている。さらにはTTPが「攻撃を認めた」との報道だが… 手口や規模の大きさからは単純にTTPの起こした事件とは見えないな。

40℃の前で足踏みしていた気温が3日前から、いきなり40℃超えでやって来た。新聞では日中気温が42℃、TVでは44℃の表示。 1階に居ても暑いのだから2階はどんなに暑かろうと、温度計を見に行ったら… 夜8時半で38℃。1階とは7℃もの温度差だ。 さすがに暑くて昨夜は水で全身を濡らした後、ついに扇風機をゆる~ゆる~と回して寝てしまったが、停電の多い当地では命にかかわる季節の到来だ。

オサマ・ビン・ラディンを殺害した(と発表されている)作戦に使用した米軍のヘリコプター残骸が、パ政府から米アメリカへ返されると。  この最新鋭ヘリは飛行音を抑え、レーダーに探知されにくいステルス機能を持つとされているが、作戦中に不具合が生じてオサマ・ビン・ラディンの隠れ家(と発表されている)敷地に不時着というか、ヘリ同士が接触して地上から極近の距離で墜落したらしい。せっかくの高性能ヘリであっても、墜落は免れないのだな。 作戦後に米軍が機体を爆破したらしいが、後部が破壊されずに残っていたと何枚かの写真が新聞などに掲載されていた。 知り合いの報道関係者(女性)は、事件発表後すぐに現場へ走り取材、どさくさに紛れて高性能ヘリの部品を(記念に)ポケットだか鞄だかにねじ込んで来たと。

イスラーム国であるパキスタンでは、女性の生活には大きな束縛があり大概が親兄弟の同伴なしには出歩けない等、早い話が自由がない。ただし一部の女性は出自や教育の程度によって、生活が大きく異なる。 一番わかりやすい1例がブット元首相だろうか。 この女性記者もアメリカで教育を受け海外のTV局で働くのだが、驚いたことに超閉鎖的なギルギットの町にも女性記者が4月から2名も誕生していたのだ。女性の1人歩きが不可能な町ゆえ、彼女たちは2人1組で取材をするが、それにしてもギルギットが大きな変化を遂げている証左だわと、ものすごく嬉しくなって2人の女性記者に対して逆インタヴューをしてしまった。

当地で新聞・TVや写真取材等のコーディネーションに携わって30年以上になるが、大体において大新聞やTV関係に勤め、安定した生活に胡坐をかいているような日本の男性報道陣は超サラリーマン化している。対して女性記者の方が「根性」が座っていて本質に迫った取材をするので頼もしい。また、フリーのカメラマンやジャーナリストと呼ばれる人たちの方が、大本営発表に振り回されず、本質に迫る記事を書いてくれる。ただし、こうした「本質」の記事は発表の場が限られてしまうので残念だが…

毎年の5月中旬ならば深夜でも熱気が残って30℃近く息苦しいばかりの気温なのに、昨夕は陽が落ちるとともに爽やかさを感じる気温に変わった。涼しさもあったせいか夕方から深夜まで続いた大統領官邸前と国会前での反政府集会には力がこもっていたな。 特に車の走行が少なくなった9時頃からは政府批判のシュプレヒコールが延々と部屋まで聞こえ、合い間には軽やかな音楽まで。 主催者としては、「重い」反政府行動だけでは若者が参加し難いとでも思ったものか。(もっとも今朝の新聞には大集会の様子は無視されたとみえ、報道にはなっていない)

深夜に開催された国会では徹夜審議の末、決議は「ビンラーディン殺害のほか、米国がテロ組織掃討の一環としてパキスタン領内で行っている無人機による攻撃についても、直ちに中止しなければ、北大西洋条約機構(NATO)軍の域内通行禁止も検討せざるを得ない」と。 また決議ではパキスタン政府に対して、「対米関係を国益が保証されるもの」とするよう等、見直しを求めていると。まぁ当然のことだわな。
だが、それならば先々週だったかにイムラン・カーンが開いた集会の内容に、オサマの事件が加わった(主権侵害の)勘定か。

しかし政府っていうのは「何」を指し、「誰」が「誰」で決議や決定するのかなぁ???  最近の政府とやらは個々人が自分のことしか考え行動していないようだから、オバハンにはもうサッパリ解らんわ… 政府としての機能を発揮していないのは、どこぞの島国だけではないみたい。(珍しくTVニュースを見たら、福島県知事が菅総理に何ぞ陳情している場面だった。菅総理は無表情・無感情だったな。ありゃぁビョーキだわ。当パキスタン国といい、日本といい…先行きは暗いなぁ)

オサマ・ビン・ラディン事件に関しては、現場へ行った人たち、地道な取材を続ける人たちに聞けば聞くほど… 米パ共同のドラマに思える。 もちろん国会議員の多くも「事実」を知っているらしいということで、完全なる出来レースみたいなものだ。深夜開催の国会開催にしても…国民向けの単なるパーフォマンスというだけに思える。だからこそ、「誰」が「誰」に対して…どうなのかと思ってしまうのだ。

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