2010年05月

温暖化と言うがここ数年は雲が多く、死にそうに暑い日は少ない。とは言うものの過日のように46℃が3日も続けば確実に食欲は減退し、食事を作る気にもなれない。だが朝30分の雨で気温が下がって生き返った。
さて毎回、湖の話で申し訳ないが、いまオバハンのアタマの中には湖の決壊模様が渦巻いている。湖を取り巻くカラコルムの山々、TVの映像で見るかぎり雪線が低い。少しでも晴れれば膨大な氷河の融水が湖に流れ込み、地滑りによって出来た自然堤を超えて流れ出すところにまで来ている。
湖からの放水量よりも流入する方が30倍以上では…まったく決壊は時間の問題だ。 

単純な比較をしてみたら…湖の長さが22kmということは、おおよそ琵琶湖くらいで、その幅は琵琶湖の3分の1くらいかもしれない。おまけに水深が100mなら、これも琵琶湖と同じくらいだ。この膨大な水が一気に溢れて下流を襲うのだ。 国際機関の調査と計算によれば決壊は今月末というが、最酷暑は6月半ばなので、決壊するとしたらその頃ではないのかとオバハンは思っているのだが。
当地の報道によれば150kmばかり離れたギルギットでも川面が15mも上昇するという。15mの上昇では川沿いのホテルはダメージを受けるだろう。そういう眼でカラコルムハイウエーの地形を見ていれば、ナンガパルバットの登り口ライコット橋は壊滅か。ダッソーの町はギリギリセーフか? カラコルムハイウエーはズタズタになって暫くは使えない等と考えて恐ろしくなってしまう。
つい先ほどは大荷物を積んだ登山隊の車が出発したから、無事にカラコルムハイウエーを抜けられるようにと、彼らからの予定を聞きながら、この3日ばかりは決壊のないことを祈り続けている。

祈りと言えば… アフガンで知り合いの邦人が行方不明になって、きょうで丸2ヶ月が過ぎた。これほど騒がれない行方不明(拉致・誘拐???)も珍しいのではないか? もっともオバハンに言わせると、初動捜査をミスガイドした人があったと思える。いずれにせよ無事でいることを祈っている。

うう~~う、熱風が吹いて暑い。きのうは45℃だと。 眼が乾いて窪んだ気がするから、きょうもシッカリ45℃はあったようだ。いよいよ暑くなったが、まだ痩せ我慢をしてクーラーを入れていない。 四大文明発祥の地モヘンジョダロは当地より南にあるため、イスラマバードより遥かに暑くて52℃だと…人間は順応性が高いとは言え、52℃は人間の生きられる限界ではなかろうか? 現に体力の無い弱い人たちは亡くなっているものな。
明日には雨が降ると天気予報では言っている、久々に雨が待たれる日々だ。

この暑さが後1ヶ月は続く。空気の澄み切った山岳地帯では陽射しが半端でなく激しい。1時間の直射日光で皮膚が火ぶくれになることもある。そんな陽射しに照らされたら氷河の融水は一気に増え、爆流となって1000mもの高度差に土砂を巻き込んで落ちていく。 地滑りの現場では、春から湖の横に水を迂回して流すためのチャンネルを造っていたが、流れ落ちる爆流と土砂を前に映像で見ていても難工事の様がわかる。命の危険もある。よく事故にならないものだ…
現地の住民たちは、政府(軍隊)が出動してもっと真剣に取り組まなかったからだと、怒り心頭の談話をアナウンサーに向かって投げつけている。が、大自然を前になす術があったのか?どうかとオバハンなどは考え込んでしまう。

刻々と水が増え、ヒタヒタと家や畑へ水が迫って来る湖上流の住民の恐怖。下流では湖の決壊で全財産が押し流される恐怖…  その中で老いた人が避難キャンプでの煮炊きにでも使うのであろうか枯れた大きな木を引きずって運んでいるのが眼を惹いた。イスマイリ派の若者たちの多くは高度な教育を受け、大都会や海外へ出稼ぎに行っているらしい上部フンザの社会様相がありありと見受けられる。
連日のTVニュースでは、湖の決壊が迫って甚大な被害が出そうだと、今頃になってワイワイ騒いでいる。なんとか決壊を免れる方法がないものか?

いま、ギルギットから対岸への橋が閉鎖になったと連絡が入った。センターへ通って来られない教師や生徒たちが出るということだ。

上部フンザに出現した湖については日本の新聞でも報道されたという。が、「土砂崩れ」という表現、報道だったので日本人の想像範疇では理解が出来ないらしく、たかが土砂崩れでどうして?と言う感じの質問が多い。
パキスタン北部には8000~7000mの高峰が並び立つ。とうぜん上部フンザを取り巻く急峻な山々には万年雪というか、万年氷河を抱いているものが多い。 もしかしたら温暖化の影響もあるのかもしれないが、氷河の重みや融水で地盤が弛んだのであろう、大きな地滑りを起こし落下したのが1月だった。最渇水期の2,3月までに政府は早く手を打てなかったものかと、今回の自然崩壊を前に想うことしきりだが、100年ごとの湖出現(いろいろな場所で)という、大自然の前には人間の力などは及ばないのかもしれない。

氷河の融ける時期に来て、標高差1000~2000mをも絶え間なく落ち続ける融水を含んだ泥濘は重く、踝までの僅か5cmの深さであっても足を取られてしまえば前進も後戻りも出来ない魔物のような存在だ。大昔、カラコルムハイウエー上で、この氷河から流れ落ちる泥濘に足を取られ倒れ流される人たちを見た。別の人は泥濘に靴をもぎ取られていた… 僅か5cmの深さが命取りにもなる。

湖の決壊を近くにして、パキスタン政府与野党の指導者たちはギルギットやフンザへ避難民たちの見舞いや激励に訪れているのを新聞やTVで見て… なんだか他人の不幸につけ入り、勧誘をする宗教団体に思いを重ねてしまうのはうがち過ぎか?  もっとも幸か不幸か、上部フンザは個人的にも世界一とも言われる金持ちの宗教指導者アガカーンを信奉するイスマイリ派の信者が多く住む地域だし、そのサポートも物凄いというから弱小NGOのオバハンたちが何かをする必要性は、今のところなさそうだ。
政府もカラッポの国庫から莫大な支援金を出すと言い、野党党首も被災家族に50万ルピーを出すと言う。5年前の大地震では被災者への支援金は10万ルピーだったかな。それから思えば破格の支援金だが、いま北方地域ではその支援金を巡っての分捕合戦で凄いと聞く。

湖が決壊すれば泥造りの家が多いこと故に、インダス河沿い川面に近いところは相当の被害になりそうだ。母子センターには被害が及びそうにないが、ギルギット川沿いのホテルなどでは避難を始めた。カラコルムハイウエーも川面に近い場所では寸断されることだろう。

調べることがあって昭和初期から敗戦後、数年間の本をここ暫くずっと読み漁っている。敗戦後の混乱を直接には覚えていないが、本を読むにつれオバハンの父親たちが交わしていた会話などから思い出すことも多い。松川事件や下山事件、特に松川事件などでは死刑判決を受けた人の家族たちが全国行脚をしていたのだろう、我が家へも泊まって「小集会」を開いていた関係上、幼心にも良く記憶している。

敗戦後の日本における、あるいは韓国におけるアメリカによる幾つかの謀略の裏面を読んでいるうちに、眩暈がして来た。4月末の荒天下、日本海フェリーで船酔いをして以来、持病のメニエール氏病が誘発され未だに治まっていないらしい。 だが、同時にアメリカによる謀略は、いまも世界中で毎日のように繰り広げられており、パキスタンやアフガンでの出来事にも重ね合わせ、不愉快さで胸が悪くなってしまったようだ。

いま、またパキスタンでは…ムシャラフ元大統領が次期総選挙への出馬を明言したというのも、現ザルダリ大統領には物足りないアメリカが、糸をひき出した結果であろう。アメリカは自国の言うがままになる人間を、何時の場合にも大統領や首相に据えることが可能だ。ムシャラフ元大統領は、いまパキスタン最高裁での喚問にも応じ、パキスタンへ戻って来るとロンドンで気勢をあげている。
かってムシャラフ大統領の支持者であったところのオバハンなどは、複雑な思いでムシャラフの言動をみつめている。ムシャラフ軍事政権時代の半ばまでの元大統領は確かに有能だったと思う。アメリカが言い募る「テロとの闘い」の最前線に立たされながらも抵抗するところは抵抗し、頑張ったとも思う。

テロの本質は自分たちの存在を脅かされ、文化や宗教を否定(抑圧)されたことによって起こるのが主だから、その辺を理解すべきなのだと、昔は単純にオバハンも思っていた。しかし、ここ数年、「テロは単にアメリカが戦争や紛争を起こし続けていたいだけ」だと理解した。
強大な軍産複合体を抱え、アメリカ経済を牽引させて行くには、戦争をすることでしか繁栄しないのだからと。

日本から帰って来た直後に、大使館から北方地域についての問い合わせがあった。そろそろ登山隊やトレッキング隊も入って来る折柄、北方地域での各種情勢は大使館も気にすべき事柄なんだろう。 
最近の大きな出来事としては、桃源郷フンザの上部で大きな地滑りがあり、比較的簡単に修復出来そうだったにもかかわらず、未だに修復不可のみならず、土砂によって堰き止められた湖の出現によって、危険度が増しているということか。 問題は最酷暑の6月末、暑さで氷河などの融水が急激に増し、それによって湖が決壊した時だ… 
現在のところ湖の長さは約20km近くで、水深は60mにも及ぶと。それこそ100年に1回くらいの割合で、これらの湖は地滑りによって出現し、崩壊によって周辺の村々に甚大なる被害をもたらして来た。先般からは政府の避難勧告も出て、34村の4万人がギルギットの親戚などへ身を寄せたと。
母子センターの教員たちからも、「避難の村人たちのために何かをしてあげたい」との声も出始めた。

久々に見た新聞では、大きくもない平船にトラックまで載せて運んでいる。平船の真ん中、胴体部分にトラックがギリギリで載っているのには驚くと共にオバハンの危機感を煽った。オバハンの単純な危機感は…クンジェラブ峠4700mを越えて入って来る「米」が手に入らなくなることだ。数日前、とりあえず備蓄用にと、余分には買って来た……が。

パキスタンと中国を結ぶカラコラム・ハイウェイでは、道路公団が迂回路を建設すべく頑張っている。しかし山岳地帯での難工事、完成は何時になるのか。 燃料や食料も平船では運ぶにも限界があり、さらには最酷暑の6月末、湖の決壊が案じられるので、日パ旅行社としては登山やトレッキングの方々へは、フンザ地区からスカルドゥ地区などへと、行き先の変更をお勧めしている。

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