2009年09月

29日間の断食月が明けた。最後の3日間だけは「お付き合いで」断食をしてみたが、季節は9月、暑さも和らぎ(とは言え、日中は34℃ほどあるが)未明の4時から夕方7時半までの断食(飲食・喫煙、すべての快楽の禁止は)さほど苦ではない。ただし夕方になると目が乾いて来るのが分かる。
新月を確認する委員会(チャンド・コミティ)によって新月が目視されて初めて新しい月を迎えるので、昨夕は久々に「新月さま、出て下さい!」と祈ってしまった。 ともあれ昨夕は断食月が終わり、新しい月を迎えられたことは有難く、アタマの重石が取れたような思いだ。
しかしながら1ヶ月間の断食行事をこなす中で、貧しく食べられない人々の気持ちを思いやること。イスラーム教徒としての連帯。自分自身の欲望に打ち勝つ喜びなどを子ども時から学べるのは、非常に大切なことだとオバハンには思える。


オバハンの「気まぐれ通信」に時々、トラックバックをして下さっている、「マスコミに載らない海外記事」のブログを以前から愛読している。 (註)ギラニ首相「私は歴史を作る」のトラックバックを参照願いたい。
マスコミに載らない記事の中にこそ多くの真実がある。そしてマスコミが取り上げる記事の多くには情報操作があり、注意を要する。 それを身をもって体験したのが911同時多発テロ(パキスタンとアフガンからの)報道だった。 パキスタンで大マスコミ様の取材手配をするようになって30年以上にもなるが、取材の手配を始めて直ぐに、「報道には多くの情報操作」があることに気付いた。 
特に911同時多発テロ報道の手配では、それが身に染みた。記者たちが現場で頑張って取材をしても、真実が紙面に反映されない恐ろしさ… 政府のマスコミ利用は実に念が入っている。

一昨日、カラチ市内の私有地で、貧しい人々に対し無料で食料配布をしていた折に数百人が殺到、30人以上の死傷者が出た事故。 警察当局は毎年、この断食月に善行を積んでいた男性に対し、「事前の届出をしなかった」として逮捕をしたが、即日で釈放した。 男性は当局に届け出をし、翌日も再び配布を開始。その際には混乱の防止にと警察官数人が人出の整理に出たが、配給券の争奪戦で再び大混乱になったと。
断食月にはイスラーム諸国のアチコチで多くの人が善行を積む。そためにパキスタン各地でもカラチと同じような混乱が起きている。 オバハンの家とは空き地を挟んだ向かいの通りでも、製糖工場を営む男性が貴重品となった砂糖を配布、30人余が殴り合いをしたとスタッフが話している。

負傷した人へのTVインタヴューによれば… 「家で待っていても餓死するだけだ。それならばここで混乱に巻き込まれて死ぬのも同じだ。死ぬつもりで頑張れば、子どもたちに食料を持って帰ってやれるかもしれない」と、答えていた女性には心が痛んだ。

諸物価の異常な値上がりで、充分に食べられない人口が増えている。報道によれば世界食糧計画の調査では、パキスタン総人口1億7000万人の約24%が栄養不足の状態に陥り、5歳以下の子供の40%近くが標準体重に達していないという。

8月半ばにはパキスタンやインドの独立記念日があったり、日本の敗戦記念日もあった。一国の独立や戦争・平和について考え、その後は昭和初期から敗戦に至るまでの本を読み漁っているうちに1ヶ月もが経ってしまった。 そもそも大量の本を読み始めるに至ったのは、8月15日のブログ(民主・社民党が、「政権を獲得した場合、靖国神社に代わる新たな国立戦没者追悼施設の建設を目指す方針」なるものには、個人的に疑問を感じている)にあったコメントもきっかけだった。

この1ヶ月間は事務所にいたにもかかわらず、珍しくブログの更新もせず自分の世界に篭もっていた。
1ヶ月間のパキスタン国内情勢などは日本を含む海外から見れば、なんということもなかろうが、多くの動きがあった。そして、その多くは裏面にアメリカの思惑が見えた。
住民にとってプラスになるのか、マイナスになるのか一向に判断がつかないが、印パ独立時からの懸案、紛争の元、カシミールや北方地域を巡る問題。 それは未だに国連の調停により、「Undecided Area」と言い、暫定的にパキスタンに帰属していたが、これが正式にパキスタンへ帰属すると3週間くらい前から新聞に載り出した。
1ヵ月半くらい前の印パ首脳会談で、ギラニ首相が「私は歴史を作る」と発言していたのは、たぶん、このことだろう。

その後はムシャラフ元大統領の処遇に関して政権は右左に揺れ、これも結局はアメリカの意図に操られるというか、アメリカの言いなりにならざるを得ないような結果になりそうだ。しかし、これはまだまだ問題をはらみ、しこりが残る事柄となって行きりそうであり、国を揺るがすことにもなりかねない…


断食月も後1週間足らずで終る。断食月に入ってからの諸物価の値上がりは予想を遥かに超えるものであり、ルピー・バリューの下落に伴い砂糖や小麦価格などに直接それは跳ね返っている。バザールで砂糖や小麦粉が払底(というか、品物隠し)  政府は基本的な食料品の価格を決めてはいるが、守られてもいない。結局、市場価格より2~3割も余分に出さね砂糖が買えないという有様だ。小金のあるものは良い、そうでなければこの物価高を乗り越せない。オバハンでさえも1kgが260Rs(従業員の2日分の日当近く)もする葡萄を初めとする果物には手が出せない。

断食月に善行を積むつもりでアチコチでは無料で砂糖や小麦粉などなどを配布しているが、それら品物の争奪戦で怪我人続出。 実際的な問題として一般庶民の物価高に対する怨嗟の声は大きい。連日のTVでもその話題しかない。 そんな中、昨日は無料物資を巡りカラチで18が人死亡。善行を積むつもりが騒乱を起こしたとして刑務所へ… パキスタンは末期的状況だな。

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