2009年06月

実は用事があって2日前からバンコックにいる。
国際線の出発ロビーには、パキスタン服の着こなしから長期滞在者と思しき、欧米人の子ども連れ家族が何組も見られた。そして海外青年協力隊々員たち、JICAのシニア・ボランティと見られる方々も。

過日、大爆破によって崩壊したペシャワールのコンチネンタル・ホテルは、「アメリカ領事館として借り上げようとしていた」というニュースだったが、関係者からの聞くところによればアメリカが買い上げ、パキスタンの武装勢力を叩くためのHQとして使う予定であったとか。 そういうことならば、コンチネンタル・ホテルは武装勢力側にとっては大牙城になるわけだ。 アメリカがペシャワールで一番大きなホテルを自分たちの出先として構えようというからには、パキスタンでの戦争をさらに本腰でやろうということになる。

オバマは今月初めエジプトで世界のイスラーム教徒に向けての演説をし、「イスラーム諸国との改善に向け、なかなか良かった」とか、「何の意味もなかった」とか、「イスラーム教徒の多くはアメリカが何を言っても信じない」等、書かれているが…   パキスタンに暮らしているオバハンなどには、オバマがイスラーム国と「良い関係を本当に作ろう」としているようには決して見えない。

国際線出発ロビーで見かけた欧米人家族たちのように、JICAの赴任者たちも家族は日本へ返し、単身赴任になるという。他、パキスタンへ今後、駐在する予定の日本人たちも単身赴任で来るというから、アメリカのパキスタンやアフガンへの作戦が今以上にエスカレートすることを多くの人が実感している。

例年ならイスラマバードでも40数℃になるこの季節。外は耐えられる暑さではないので、どんなに用事があっても絶対に外出しない。が、いやいや有難いことに37℃と涼しい日が続いているので、チョロリとバザールへ出かけて来た。
街中にある欧米人が集まるレストランやホテルで働く人々は最近、日々、戦々恐々で暮らしている。その恐怖は先般のペシャワール、コンチネンタル・ホテルの爆破でさらに増した。パキスタン在住の外国人たちに混ざって、高級な店へ行くような金持ちたちにも外出を控えるようになった。 日本でならばケンタッキー・なんとかチキンの店などは、気軽なファースト・フードの一軒なのだが、バーガー1個(日本円にして300円)は一般パキスタン人の日当に値するから大衆には敷居が高い。
そのケンタッキー・なんとかチキンの店、通り沿いの赤いシャッターを総て下ろし、開けているのは人間が1人通れるドアの隙間のみ。その入り口には金属探知機のゲートが設けられ、銃を構えたガードマンが3人。店内は見えなかったが、中に居て爆破に遭ったら焼け焦げるか瓦礫の下になるか。とにかく、絶対に外へは逃げられんわなぁ…。

先般のペシャワール、コンチネンタル・ホテル爆破の後、国内4大都市にあるコンチネンタル・ホテルへは武装勢力からの脅迫状が届いているという。曰く「外国人を泊めるな。アルコールの提供を止めよ!」など。
それにしても、政府の事故後の発表は何時も何時も不可解だ。オバハンが知っている限り、古くはオジュリー・キャンプの爆破。近いところでは昨秋のマリオット・ホテル。今回のペシャワールでも死者の数は政府発表の倍ではきかないという。その現場で働いていた人たちが証言しているのだから、政府発表より現場からの証言の方がただしいのではないか?と、オバハンには思える。だが…死者を少なく言うと、どんなメリットがあるというのか?

最近はTVも新聞も見ないことが多くなった。見ても明るいニュースがない。TV画面のテロップも各地で起こる「爆破と銃撃」以外にはないのかと言いたいくらいだ。
しかし、今朝は戦闘機が頭上を何回か飛び、空気を切り裂き大地を震わせるような騒音に5匹の犬たちが一斉に空へ向かって吠え、2匹の猫が背中と尻尾の毛を逆立ててベッドへ飛び込んで来たので何事かと緊張した。 久々に付けたTVでは、インドの首相とザルダリ大統領が会談。イランの選挙結果をめぐって改革派と保守強硬派の現大統領が激しく対立のニュース。最初から結果が決まっているようなアフガン大統領選挙の受付が終ったくらいで、パキスタン国内では重大な事件が起こっておらず安堵した。
各地で頻々と起こる爆破や銃撃、誘拐、武装勢力の掃討オペレーション、その結果、続々と生み出される国内避難民のニュースにも国民の関心は薄れがちだ。というよりも自分に直接の被害がない限り、暗いニュースはもう出来るだけ聞きたくない… イスラマの暑さは大分ましになったが、人々には暑さと厳しいインフレをどうしたら乗り切れるかと、そちらの方へ関心が高い。


日本は1週間くらい前から梅雨に入ったと聞く。イスラマバードでも3日前から例年よりは早いモンスーンに入ったようで雲が多く、この3日間は雨がパラつく空模様に変わった。最高気温も40℃から34℃へ、最低気温が20℃を切ったので暑さに慣れた身体には少し寒さを感じる。で、暑い季節には絶対に着けない下着を引っ張り出した。下着ナシではお腹が冷えて体調を崩しそうだ。昨夜などは窓を閉め扇風機も止めて寝たから、年間の最酷暑6月半ばとしてはオバハンが知っているこの30数年では初めてのことだ。

幾ら水を遣っても追いつかないくらいに乾燥してヘバっていた庭も生き返った。誰よりも喜んでいるのは暑い日中、庭の掃除と水遣りの手間が減った庭師かもしれない。 しかし、今年もモンスーンの入りが早い。町中で暮らすオバハンたちにとっては有難いが、登山やトレッキングには厳しいことだろう… 
特にこの気温下では、登山隊と荷運びのポーターたちが消費する燃料は通常の2倍以上になりそうだ。仮に800リットルの灯油を運ぶだけのためには40人のポーターが必要で、その40人が消費する燃料や食料を運ぶためには更に30人ばかりが必要で、その30人の消費するための物資を運ぶためには…と、物価高の中で考えて、うんざりしてしまう。

オバハンの経営する日本食レストラン「きまぐれ亭」には過去何人かのコックが居る。今いる若いコックはオバハンより上手にほうれん草の胡麻和えを作り、てんぷらを揚げる。 この間まで居て、スタッフ同士のケンカで辞めた海軍退役のコックも素晴らしい腕の持ち主だった。不便な軍艦の中で厨房を仕切っていただけのことはあって、水や材料を無駄に使わないこと! 狭い厨房の中で働いていたせいかデカイ身体にもかかわらず細々と無駄のない動き。そして将校の食事を賄ってたのでパキスタン料理は絶品だった。
何よりも最高なのは、オバハンがムチャクチャなことをほざいても、「イエッサー、イエス・マダム!」と即答、命令に100%従順なことだ。

先般の大物コックなどは、この30年間の中で超最低だったが、一昨日、臨時(試しに)来てもらった人はパキスタンにもこんなコックさんがいるのか?と感動するくらい、これまた最高だった! 先般の3日間コックとは大違い、「弘法 筆を選ばず!」 ウチのへぼいオーブンで作ったイタリアン料理は絶品。クリームとソースのやさしい風合い、美味しいこと! 日本ででも、あれだけの味には出会えないと思わせた。 最後には洗い物も全部、自分で終え、床の掃き掃除までして、他にすることは?と確認して帰って行ったから、どこぞの大物とは月とすっぽん! 日本では当たり前のことが当地では当たり前ではないので、この礼儀正しく、何もかも弁えたコックさんにオバハンは、ただただ口をあんぐり開けていた。
他人に厳しく自分に超甘いオバハンが褒めるのだから、その最高ぶりも推して知って欲しい。普段は某国大使館員宅で働いているコックさんだが、週末だけは呼ばれた大使館や欧米人の個人宅パーティへ出張して料理を作るのだという。なるほど、合理的な外国人たちの生活様式だ。

つい先般の大物コックで懲りていたオバハンは、ヨーロッパ人の間で評判の「このコック」に期待せず、だから調理をまったく見ていなかった。あんなに美味しい料理を作る人になら、最初からベッタリとくっ付いて料理を習うのだったと、残念でならない。今後は月一で来てもらい、教えを請わなくっちゃ~~

日本は入梅とのことだが当地は6月の半ばになろうとしているのに、まだ40℃にならない。湿度も30%と乾いた日が続いているので、扇風機をゆるゆるまわした状態で室内は充分に涼しい。もっともTVで報じている気温の表示は40℃を超えているが、新聞の方は常にTV報道より2~3℃低い39℃だ。不思議~~~。
昨夜は、登山隊も出発したので睡眠不足を補うため、TVも見ずに早寝をした。例年に比べると過ごしやすい毎日なので体力が落ちる筈もないのに、なんとなく疲れが溜まっている。早寝早起き昼寝はするものの、朝5時から動き始めるせいかもしれない。

5時、TVをつけるとペシャワールの最高級ホテルが大破したとのニュース。当局推定では500kgの爆発物、それを積んだ小型トラックが銃を乱射しながらゲートを通り抜け、ホテルの正面へ突っ込んだという。昨秋のマリオットほどではないがホテルは見事にボロボロとなっている。 知り合いが週明けからペシャワールへ出張だと聞いていたので電話を安否を尋ねてもらったら、「団体からの指示でコンチネンタル・ホテルに泊まる予定で向かっていたら… 目の前で黒い煙が立ち昇りホテルが無くなっていた」と。普段から十二分に気をつけている人だから事故に遭う確率は低いが、巻き込まれなかったのは「単に運が良かった」としか言いようがない。

当局は掃討を続ける政府に対する武装勢力の報復だと発表しているが… マリオット・ホテルとパール・コンチネンタル・ホテルはオーナーが一緒。過去6回の爆破のうち、純粋に武装勢力に狙われたのは半分くらいではないかとは巷の話。誰と敵対しているかは、怖くて書けないが…

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