2009年04月

治安悪化の折柄、外出はしたくなかったが… 真夏が来る前にアラビア海から送られて来る魚の仕入れと、自分の「思いつき」を確認したくて市内中心部の小さなバザールへ出かけた。海魚を売っている店は市内に1軒しかなく、まともそうな魚には夏場の半年間はお目にかかれないから、きょうが今春の仕入れ最終日といったところか。 その魚屋の前にも、ついに銃を持ったガードマンが立つようになり落ち着かないこと甚だしい。 外出の時間は「最短」でと、ついでの買い物(若干の野菜と果物)は超特急の4分間ばかりで終え、買い物の合計を確認もせずに来たが、諸物価の値上がりの凄さだけは分かった!

帰りは行きとは別に丘沿いの道を通ったが、市内にある国際機関の建物の物々しさ。イスラマバードは首都とは言え、大きなビルが極少で国際機関なども個人持ちの住宅を利用していることが多い。もっとも個人の住宅とは言え、国際機関が利用するような建物は敷地が300~600坪もあり、部屋(畳にして20~30畳、トイレ付き)数も10~15はあるから、日本とは桁違いの住宅だ。

その住宅に入居している国際機関は屋根や屋上に高大なアンテナを立てているし、最近では底辺部が2m、高さが4mもあるコンクリート製の頑丈なバリケードを延々と敷地の周囲に張り巡らせているから、余計に目立つ。イスラマバードもアフガンの首都並みの警備になって来た。
先般は爆破続きのマリオット・ホテルを見て、多国籍軍の基地か?と失笑していたが、いまやイスラマバード市内のアチコチに多国籍軍の基地が出現したかのようだ。

バザールから自宅までの5kmでは厳重な検問があり、今までなら外国人であるオバハンが乗っている車など、警察は一瞥して通してくれたものだが、きょうは5分以上も足止めされた。もっとも一般車のようにUターンを強いられなかっただけマシだが、火炎樹やジャカランダの花を愛でながら帰ろうと思ったのに、無粋なことだ。

国際機関や大使館に勤務する外国人の家では大分前から武装したガードマンを雇うようになったし、各街角にある兵士の篭もる土嚢も高く厚くなった。また街の至るところに駐屯する警察や兵士のテント周辺部も、多国籍軍のようなバリケードが積まれるようになった。
日本でも一部の新聞は、「パキスタン情勢、 アメリカは最悪のシナリオを懸念」などと、アメリカの発表をそのまま載せ煽るようで、チト不愉快だ。 経済不況のアメリカは、パキスタンやアフガンへの多大な出費をなんとか自国民に納得させるべく、過剰な発表をしているのか?

きょうの当地報道では、イスラーム武装勢力が軍による掃討作戦を理由に、北西辺境州当局との和平交渉を打ち切ると宣言したらしい…。これで今まで以上に神経を使わねばならないのかも…

今年も八升豆を蒔く季節がやって来た。
地球全体では温暖化だと姦しいが… オバハンが暮らすパキスタン(イスラマバード)に関して言えば、年々、気温が下がっていると思える。 というのも元は山登り一筋で、この30数年間は登山隊やトレッキング隊などの手配をする関係で、天候や気温には敏感なのだ。

パキスタンへ移住した29年前からの10年間は、4月10日になれば寝られない暑さとなり、エアコン嫌いなオバハンには歯を食いしばる季節が始まったものだ。6月下旬には47℃にもなった。 ところが10年ほど前から気候が変わりだし、特にここ数年は4月になっても雲の多い日が続き快適だ。おかげでまだ毛布を被る生活が出来ている。 確かに、この何年間かは季節の進み具合が1ヶ月以上も早いと思われるが、暑さのピークが来ても44℃くらいにしかならないし、全般に雨(曇り)空が30年前に比べると格段に多い。
ま、オバハンにとっては有難い限りの自然現象だ。 

で、八升豆の話だが、昨年と同じく4月下旬になったので種豆を水に浸けた。
昨年はギルギットの母子センターにも蒔いてみたが、暑い季節がイスラマバードよりも短くて収穫はイマイチだった。 イスラマバードでは4年続けて植えた場所では連作障害が出て、これまたイマイチの収穫だった。 たかがマメ、しかし難しい。 
連作障害に懲りて、今年は新しい場所で植えてみるが… 難は水があまり豊富ではなさそうなことだから、井戸でも掘るか…。

昨年の収穫で作った味噌(醤油)はなんとも言えず美味しいので、オバハン自身は大満足なのだが、いかんせん重くて日本へは運べない。

5日間、ハプニングありあり書き切れないほど満載、久々にスリルとイライラのパキスタンを満喫して来た。
今冬から中国がカラコルム・ハイウエーの拡張工事をしている。2月の通過でも時間はかかったが、カラコルム・ハイウエーだけではなくイスラマからペシャワールへの幹線道路も工事中で、首都から外へ出ればどこを走っても時間のかかること、甚だしい。

カラコルム・ハイウエーの道路状況は2ヶ月前より悪くて、平均して普段の25~30%増しの時間がかかる。警察の検問所も再び増え、この上に雨でも降ればさらに時間がかかるのだろう。治安の悪化で強盗でも増えたのか、一般車への夜間の警察車輌による伴走警護も以前に比べると強化されている。

おまけに北西辺境州へ入ると、今まで以上に町を歩く女性の姿は少なく、スワット地域と山を一つ隔てたベシャムの町では髭の長い男が目立つようになった。明らかにスワット地域の影響で、外見のタリバーン化だ。この分ではコーヒスターン地域のタリバーン化も可能性が高くなった。 イスラマバードから車で4時間も走れば町には女性の姿がなくなり、むさい男たちばかりが行き来しているのを車の中から目にするだけで肩に力が入ってしまう。

一部の報道によると、「イスラーム武装勢力が首都のわずか100km余り北へまで支配を広げ、地元住民は首都などに避難を始めた」と。 う~~む…なんだかおどろおどろしい書き方だなぁ~とは思うが、北西辺境州の今後には目が離せないのは確かだ。 首都の100kmにまで武装勢力が迫っているが、「パキスタン政府はこうした事態に対する反発や懸念の声が小さく、パキスタンの文民および軍人の最高レベルに届いていない」と、クリントン国務長官は危機感を示したというが… こうした事態になってしまったのは単にパキスタンだけの責任ではない。
また政府関係者には危機感がないのではなく… 要人たちは日々、車輌ナンバーを変えて走っているのだから、危機感は充分にある。
ただ、私腹を肥やすことにしか興味がない指導者にしか恵まれず、アメリカの過剰な内政干渉などで手が打てない状況にまで陥ってしまったパキスタンの不幸。

金曜礼拝のきょう、近くのラール・マスジッドでは夏の陽射しを遮るべく、礼拝用の天幕が幾つも張られ相当数は集まっているが、騒ぎもなく3週続けて普通の礼拝風景だった。まぁ、仮釈放中に騒ぎを起こすほど愚かではあるまいが、大衆の暴発は怖い。

1年9ヶ月前に世界中の耳目を集めたラール・マスジッド(赤い色のモスク)の指導者が昨夕、仮釈放されマスジッドへ戻って来た。2年近くも収監されていたとは見えない(痩せても居なければ、顔色も悪くなかった)健常な様子で、万を超す支持者たちに揉まれ担ぎ上げられ凱旋将軍のようだ。 彼の27もの罪状のうち、3つほどについては無罪が確定とある。しかし多くの人命を損なうことになった原因を作ったことや、一例を挙げるなら中国人への拉致、暴力(失明と脊椎損傷など)、焼き討ちなど等だけでも、指導者として教唆の罪は大きいだろう。 
ムシャラフ前政権に対するあて付けのようにも感じる今回の異例な仮釈放には、納得が行かない。近在に暮らす住民としての迷惑、ビジネス損失など個人的に被った額は如何ほどになるのであろうか?

仮釈放に際し、TVのスピーチで凱旋将軍サマは「スワット地区でのイスラーム法(シャリア)導入を歓迎する」と。 また昨夜は深夜まで原理主義者どもが集い、ざわめきが途切れなかったし、きょうの金曜礼拝に至っては気合の入った説教が流れた。 首都のど真ん中でイスラーム法(シャリア)の導入を声高に騒ぐ狂信派の集う場所が再び出来るのかと想うだけでも、鬱陶しい。

「シャリア」とはイスラーム教に基づき、個人や国家の規範など等、幅広い法体系と言われている。イスラーム教の開祖、預言者ムハンマッドはアッラー(神)の啓示を受けイスラーム共同体を営み、原理主義者たちは、その頃の教えの原点に立ち戻り政治や社会を正そうとしているのだが… 時代に合わない事柄も多い。

明日17日は東京で20ヶ国か30ヶ国が集まってパキスタン支援国会合だと。
アメリカさま強い後押しによって、日本も大枚の支援金をパキスタンへ拠出くださることになった。日本の支援はアメリカと並んで10億ドルという。 日本政府は支援金の使い方について幾つかの条件を付けているようだが、無償にしろ有償にしろ、「、そんなもん、貰った者がどう使おうが自由」と受け取る方は考えていることだろう。
なにしろ大統領さまが、あのお方だからな… もっとも大統領さまの地位は徐々に下がって、実力のほども見えては来ている。

条件の(1)は、パキスタン国民の所得格差を広げずに財政赤字の削減を目指す経済改革支援  (2)「テロの温床」と言われるアフガニスタンとの国境地域を視野に入れた貧困層支援だと。いずれも「テロの温床となる貧困」に目を向けているところは正しい。が… 出しっぱなしとなるなら意味はない。
貧困層の多いパキスタンとアフガンの国境地帯、最貧困州のバーロチスターンには政府のスタッフや支援国のスタッフもが気軽に調査にすら行けない現状を考えると、結局はパキスタン政府の言いなりや、事後のレポートもそのまま鵜呑みにするしかないのだろう。


その大統領さまも、ついに北西辺境州スワットの武装勢力と和平合意について調印した。これで堂々のイスラーム法が導入される。海外の非イスラーム諸国からみれば理解不能で納得の行かないイスラーム法であっても、それを求める人たちも居るということで、「そうした価値観もある」現実を受け止めて貰いたいものだ。
現パキスタンは元宗主国のイギリス法に準じているが、地方ではイスラーム法廷も並立で存在していることだし、そこはお国柄というものであろうか。

イスラーム法の導入で人権侵害が起こるのかどうか、それは価値観によるものだろう。また貧困が深刻化したのは大国の干渉で反米・政府になって武装化が進んだことや、部族社会や長老主導による従来の社会形態が破壊され、秩序がなくなったことも大きいとオバハンは見るが。

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