2007年11月

「非常事態宣言が解除になる~~~、おめでとう!」
「一昨日●●大臣が官邸から出されたというから、もしかしたら解除か!?と期待してた、やっぱりだった」
昨夜、遅くに帰って来た息子がオバハンの部屋まで来て報告。
「明日の新聞では、このニュースが一面トップだなぁ~ 良かった!これで商売にも身が入る…」
政治には関係のない商売人の息子にしてみても、この1ヶ月間は仕事の方針が決まらず重苦しかったようだ。外国人のオバハンですら、大好きなパキスタンの先行きを案じ、どれだけ不安だったか。心ある人たちと同じように抗議行動も出来ず、ひたすら本読みに走って、現実を見ない逃避生活に陥っていた…

知り合いの海外逃亡に手を貸し、何人かを匿って来た息子は10円ハゲが出来そうな焦燥に陥っていたと思う。
「○○にも選挙に間に合うよう、▲▲からパキスタンへ帰って来るように指示があった」と息子はホッとした表情でいる。ムシャラフは非常事態宣言を12月16日に解除、総選挙は憲法に基づいて公正に実施すると言明している。

しかし、冷静になって考えてみたら…  ムシャラフは自分が大統領になるだけのために、非常事態宣言を出しただけだ… これは、許されるべきことではない。

50日ぶりの雨となった。これで50日分の厚く積もった土埃が洗い流されるのだろうか?と、思いながら天窓に落ちる雨音に聞き入っている… 遠雷が徐々に力強くなって来た…
山岳地帯や地震の被災地では過酷な雨(雪)だが、降ってくれないと旱魃になる。昨日、地震の被災地から帰って来たNWAのメンバーたちによると、山には雪もなく来年が思いやられると言うから、本格的な冬を迎える前の雨、有難い。

本日、ムシャラフは文民大統領として初演説。
その中で、「民主主義、人権、安定、これらを我々は望んでいる。しかし、これらの達成は我々のやり方で成し遂げる。パキスタンの社会や状況を誰よりもよく理解しているのは、西側の人間ではなく我々自身だ」と述べている。確かに、それはムシャラフの言う通りだ… 鮮やかなお手並みを見せて頂きたい。

また、非常事態宣言の解除を迫る欧米の圧力は拒絶したというが、非常事態宣言解除のパワーを持ったのはキアニ新陸軍参謀総長ではないのか?

昨日、陸軍を退任。本日の大統領としての宣誓を済ませる僅かな時間に、ムシャラフが更迭されるのではないか? ●●大臣が官邸から出されたから非常事態宣言の解除は近いのではないか? 北西辺境州(スワット)へ大軍を導入、来月初には治安を回復して非常事態宣言を解除するらしい等など、朝から巷は喧しい。

ただ、思い返せば、ムシャラフも今年に入って矛盾の多い言動が目立ったが…
全般的にみれば、クーデター後からの数年はアメリカを相手に、剣の刃を渡るような外交を続け、頑張ったと思う。そうでなければ、アフガンと変わらないような事態になってたやもしれない…
11月3日からの非常事態宣言は確かに残念だが、この国には欧米の言う「民主主義」が根付くのには時間がかかる。
暗い気持ちでいささか落ち込んでいたオバハンだが、ムシャラフなりの民主主義とやらを待ってみよう…

7ヶ月ぶりに被いを外した天窓から揺れる樹が見える、風が出て50日ぶりのポツポツ雨。遠雷も聞こえて来たから、これで季節が冬に変わるのかもしれない…

アメリカがアルカイダやタリバーンの勢力の増大に対抗するとして、パキスタンの部族地域で、北西辺境州兵や治安部隊の訓練計画をしていると、昨日ブログに書いた。
英国やアフガニスタンに拠点を置く民間の国際シンクタンクの調査では、「タリバーンの恒常的な支配地域は、先月の調査時点で全土の54%に及び、地方における複数の中核都市や国境地帯、幹線道路はタリバンの支配下にあり、市民にもタリバーンに政治的合法性があるとの感情が増している」という。

このシンクタンクの真の意図は分からない。
テロ掃討にさらなる無駄金を投入するための言い訳、あるいは伏線かもしれないし、単に欧米を初めとする先進諸国にテロの恐怖を煽るつもりなのかもしれない。
しかし、そのシンクタンクが言うには… 「アフガンの現状が示唆しているのは、タリバーンが首都カブールに戻ってくるかどうかという問題ではなく、いつカブールに戻ってくるかという問題で、2008年にも起こる可能性がこれまで以上に高まっていると警告。時間切れになる前に、国際社会は戦略を劇的に変換させる義務があると指摘」しているという。

日本では自衛隊によるインド洋(アラビア海)での給油活動再開をめぐって、国会でも紛糾??しているが、アフガニスタンにおけるアメリカを筆頭とする多国籍軍の作戦が、膨大な軍事費用を使いながら、また膨大な支援金を投入しながら「失敗している事実」が何故、キチンと日本では報道されないのか?

自衛隊による給油がどう使われているかも知らず、日本政府はアフガンで血税の垂れ流しを続けようとしていることを、真摯に考え直すべきではないのか? もっと声を大にして国会へ届けるべきではないのか?
また、そのシンクタンクの言う「市民にもタリバーンに政治的合法性があるとの感情が増している」という部分は、我々も大切に考えるべきではないのか? 多国籍軍による統治が間違っているという事実ではないのか?

911同時多発テロで、容疑者オサマ・ビン・ラディンを匿っているというだけの理由で、アフガンへの空爆に踏み切り、あれから丸6年。アメリカによって崩壊させられたタリバーン政権が徐々に盛り返し、国民の支持も受け初めているとはどういうことなのか? 
多国籍軍がタリバーンに勝利するためには… アフガンの国民の半数(アフガンにおけるパシュトーン人の人口比率は50%以上)を殺戮しなければ勝てないのではないのか…

日本政府は、単に給油継続の可否で大騒ぎをしているが、アフガンの現状を見直し、アメリカの言いなりになって給油再開をする方がアフガンのために良いのか、どうかと考える方が良くはないのか?

ムシャラフはついに、「自分の肌」とも言えるような陸軍参謀総長の制服を脱いだ。
「脱ぐ」とアナウンスがあった日のムシャラフは、とっても明るくて機嫌が良かったし、饒舌でもあった。非常事態宣言を国民に説明した日のムシャラフとは別人のようだ。
非常事態宣言をした日の緊張ぶり、操り人形のような迫力のなさ、手のふるえは一体なんだったのか? 瑣末な疑問だが、未だにオバハンには気になってしょうがない。

本日は朝から陸軍参謀総長の交代式を放映している。ついに指揮棒がキアニ副参謀長に渡った。これで明日、ムシャラフが大統領2期目の宣誓を済ませれば、宣誓とともに軍籍を離脱するが、陸軍特殊部隊による身辺警備は受け続けることになっている。ともあれこれで約8年間余も続いた軍支配の形が終わることになる。形の上での軍事政権は終わったが、だからといって通常の文民政権になったとも言い難いから、これからどうなるのか?

パキスタン軍には勇猛果敢なパシュトーン人が多い。しかし、キアニもムシャラフもパンジャーブ州出身。キアニはムシャラフの股肱の臣というから、当面は同じ路線を歩むのだろうな…  
パシュトーン出身の軍人たちからすれば、大いに路線がズレるところなのだろう…

過日、アメリカから特使がやって来た。一部では、「子どものお使い」みたいだと酷評を受けたが、ムシャラフ(パキスタン軍?)とは数々の密約を交わすためのお土産も持参したらしい。
密約の部分は知らない。しかし、お土産の中にはアフガニスタンと国境を接する部族地域に米陸軍部隊を駐屯させ、パキスタン北西辺境州兵の訓練に当たるというのがあると。
何人のアメリカ人がパキスタンへ来るのかは知らない。が、パキスタン国内での米軍の立場が飛躍的に高まるのは確かだろう。911同時テロから1年間くらいは空港やイスラマの街中で態度のデカイ米軍人を良く見かけた… 真冬でも半袖の軍服で、太い腕には金色の産毛を光らせ、当地の庶民を見下していたのはアフガンと同様だ。しかし、911直後と今では、アメリカに対するパキスタンの国内感情も異なる。反米感情が高まるのは避けられまい…

アメリカはパキスタン北西辺境州兵の訓練に、数年間で約3億5000万ドル(約386億円)の予算を計上しているというが、その金額を軍備や破壊に使うのではなく、水利などの建設に使って貰いたいと思うのだ…

AFP通信が「ムシャラフ大統領は29日に文民大統領として宣誓する」と報道している。
そして、その日に陸軍参謀総長を退任すると。宣誓と同時に退任が有効になるらしい…

最近は新聞を見ても、情報通の話を聞いても明るい話題はない。もう何だか無気力になりそう…
報道の自由を求めて闘っているジャーナリスト、あるいは正義のために、民主主義のために闘っている法曹関係者たちと、無責任に思いつきを書き散らしているオバハンとの違いだワ…

ただ、迷惑をかけそうで書けないことも幾つかあって、それも気分が晴れない。
なんとなく気色が悪い…… いつまで続くのか、この強風……

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